
- ハラスメントは“悪意”ではなく“すれ違い”で起きている
- ―「ハラスメント撲滅月間」にあたり、現場の声から見える“相談の壁”と現代の課題―
- 12月は、厚生労働省が定める「職場のハラスメント撲滅月間」です。
- 制度整備が進む一方で、現場では“悪意ある加害”ではなく、価値観や立場、状況判断の違いから生まれるコミュニケーションエラーがハラスメントにつながるケースが増えています。働き方・世代・背景の多様化により、「どこからがハラスメントなのか」「相手はどう受け取るのか」という基準が揃いにくく、判断の迷いや相談しづらさが複雑に絡み合っている状況です。
- 株式会社ベアラボ(所在地:東京都新宿区、代表取締役:滝井順子)は、複数企業で実施したハラスメント・コンプライアンス研修の受講者アンケートを整理し、現場に潜む課題と“相談しやすく、すれ違いが生まれにくい職場づくり”に向けた考え方をまとめました。
- ■ 背景
- 現代の職場では、ハラスメントが“明らかな攻撃行為”として表れるだけでなく、日常のふとした場面にも潜んでいます。
- ・同じ言葉でも、立場や世代によって受け取り方が変わる
- ・良かれと思った言動が、相手には負担として届く
- ・休憩室・喫煙室・飲み会など、非公式な場面で起こるすれ違い
- ・慣習や思い込みが行動に入り込み、意図せず傷つけてしまう
- こうした“価値観の違いによるコミュニケーションエラー”は、本人が加害意図を持っていない状況でも発生します。そのため厚労省は「気づく・相談する・話し合う」職場づくりを推進しています。しかし、個人だけでは気づきにくいリスクが増えており、注意や配慮だけで防ぎきれない複雑さが生まれています。
- ■ 現場から見える課題
- 複数企業の声を整理した結果、以下のような課題が共通して見られました。
- ● 判断を個人で抱え込みやすい
- 違和感があっても「自分の思い込みかもしれない」と声を上げにくい。
- ● 相談すること自体に心理的ハードルがある
- 「大げさにしたくない」「相手に申し訳ない」という遠慮が相談行動を妨げる。
- ● 相談先や手順が分かりづらい
- 制度があっても、“誰に・いつ・どう相談すべきか”が明確でない。
- ● 立場や世代で“見えている景色”が異なる
- 同じ場面でも受け取り方が違うため、判断基準が揃いにくい。
- ● 価値観の違いが「線引きの不一致」を生む
- どこからがハラスメントなのかの感覚に幅があり、摩擦が起こりやすい。
- ● 個人の努力だけでは限界がある
- 配慮していても無意識のズレが起きることがある。
- ■ 研修アンケートから見えた4つの傾向
- 研修の受講者が“未然防止に特に重要だと感じた点”として挙げた主な内容は以下の4つです。
- ① 迷ったときに立ち止まる姿勢
- 独断で進めず確認することで誤解を防ぎやすい。
- ② 相談しやすい雰囲気の重要性
- 心理的ハードルが低いだけで、相談行動は大きく変わる。
- ③ 日頃の信頼関係の重要性
- 気軽に話せる関係ほど、すれ違いやコミュニケーションエラーが起きにくい。
- ④ 判断基準を揃える“教育と対話の場”の必要性
- 基準を共有する場がなければ、価値観のズレは埋まりにくい。
- ■ 考察
- ハラスメント防止には「個人の注意」だけでは限界があり、相談しやすい環境と、価値観や判断基準をすり合わせる仕組みの両方が必要です。現場の迷いを深めやすい背景には、以下のような状況があります。
- ・判断の線引きが曖昧
- ・相談のタイミングや手順が分かりづらい
- ・声を上げづらい雰囲気がある
- ・立場・経験・世代で“見えている世界”が違う
- ・価値観の差による判断のズレが埋まらない
- ベアラボの研修では、ディスカッションやゲーミフィケーションを通じて、“価値観の違いによるコミュニケーションエラー”を体験的に理解する構成を採用しています。
- どのような場面で負担を感じやすいかといった“感情の違い”をゲーム形式で体感することで、日常に潜むすれ違いに気づきやすくなり、組織として基準を揃える対話にもつながっています。
- ■ 今後の展開
- ベアラボでは、今回の気づきを踏まえ、ハラスメントを「個人の注意」に委ねるのではなく、“相談しやすい状態”と“価値観のズレに気づける環境”を組織として整える取り組みを今後も進めていきます。
- 企業ごとに異なる現場の状況に合わせ、判断基準を揃えるための対話の場や、相談行動を後押しするコミュニケーション整理など、実務に直結する支援を継続して提供していきます。
- すれ違いが生まれにくい職場づくりは、一度の研修で完結するものではありません。
- 働く一人ひとりの認識と、組織としての仕組み・姿勢が重なり合うことで、安心して相談できる環境が育っていきます。
- 12月の「ハラスメント撲滅月間」を機に、企業が“声をあげやすい・すれ違いに気づきやすい職場”へと一歩踏み出せるよう、今後も現場に寄り添った支援を続けてまいります。