
「残業を減らす」だけで十分? 仕事が終わっていても、誰かが無理をしているかもしれない
11月は「過労死等防止啓発月間」― 業務の偏りと仕事の進め方から考える過重労働対策
11月は、厚生労働省が定める「過労死等防止啓発月間」です。期間中は、過労死等の防止に向けた啓発活動や、長時間労働の是正などを目的とした「過重労働解消キャンペーン」が実施されます。
働き方改革が進む一方で、長時間労働や過重労働は、企業が引き続き向き合うべき課題です。仕事が速く正確な社員への業務集中や、優先順位が曖昧なまま増え続ける仕事など、日常の業務運営の中に負担が生まれる要因が潜んでいることもあります。
組織開発・人材開発事業を展開する株式会社ベアラボ(所在地:東京都新宿区、代表取締役:滝井順子)では、労務管理研修やタイムマネジメント研修、管理職研修などを通じて、法令や制度への理解に加え、業務の進め方や役割分担、部下への関わり方など、現場での具体的な判断と行動につなげることを重視しています。
今回は「過労死等防止啓発月間」にあわせ、過重労働を防ぐために企業や管理職が見直したいポイントを紹介します。
■ 長時間労働の削減が進む一方、依然として残る過重労働の課題
厚生労働省が公表した「令和8年版 過労死等防止対策白書」によると、週40時間以上働く雇用者のうち、週60時間以上働く人の割合は、2025年に7.7%となりました。国は2028年までにこの割合を5%以下にする目標を掲げており、長時間労働の是正は引き続き重要な課題となっています。
また、同白書では、仕事や職業生活に関する強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者のうち、「仕事の量」をその内容として挙げた人は39.5%となっています。
こうした数字からも、労働時間だけでなく、業務量や働く人への負担に目を向ける必要性がうかがえます。
過重労働を防ぐためには、労働時間の適切な把握や36協定の遵守、健康確保措置など、基本的な労務管理が欠かせません。しかし、残業時間の数字だけでは、特定の社員への業務集中や、仕事が予定どおりに進まない原因まで把握できない場合があります。
「どれだけ働いているか」だけでなく、「なぜその働き方になっているのか」を考えることが、過重労働を防ぐための重要な視点です。
■ 過重労働を防ぐために見直したい3つのポイント
- ① 仕事ができる人に業務が集中する悪循環を防ぐ
- 職場では、仕事が速く正確な社員ほど、急ぎの仕事や難しい仕事を任されることがあります。その場では合理的な判断であっても、繰り返されることで特定の社員への負担につながる場合があります。
さらに、他のメンバーが経験を積む機会を得られず、次の仕事も同じ社員に任せざるを得ないという悪循環が生まれます。こうした状態が続けば、業務の属人化が進み、担当者が不在になった際に仕事が滞るリスクも高まります。
改善するためには、単に仕事を均等に割り振るのではなく、業務の難易度や必要なスキルを踏まえ、他のメンバーにも段階的に任せていくことが重要です。
また、仕事ができる社員に後輩の教育を任せる場合も、通常業務に上乗せするのではなく、本人の業務量を調整する必要があります。
管理職には、特定の社員に業務が集中していないかを把握し、一人ひとりの経験やスキルに応じた役割分担と人材育成を進めることが求められます。
- ② 「誰に任せるか」の前に、業務の優先順位を見直す
- 業務の分担を見直しても、チーム全体が抱える仕事の量が多ければ、過重労働の根本的な解決にはつながりません。大切なのは、誰が担当するかだけでなく、そもそもその仕事を今行う必要があるのかを考えることです。
特に年末に向けては、「できれば年内に終わらせたい」という仕事が重なることもあります。こうしたときこそ、業務の必要性や優先順位、期限を改めて見直すことが重要です。
まずは現在抱えている業務を洗い出し、重要度や緊急度、期限を整理する。そのうえで、何を優先し、何を後ろにずらすのかを判断することが重要です。
新たな仕事を追加する際にも、既存業務の何を調整するのかをあわせて考える必要があります。
すべての仕事を同じように急ぎとして扱わず、チーム全体の業務量を踏まえて優先順位を判断することが、無理のない業務運営につながります。
- ③ 労働時間だけでなく、心身の負担や変化にも目を向ける
- 勤怠記録や残業時間を正確に把握することは、過重労働を防ぐための基本です。しかし、労働時間の数字だけでは、社員一人ひとりの業務負担や心身の状態までは十分に把握できない場合があります。
例えば、普段は問題なく仕事をこなしている社員でも、業務の集中や急な依頼が続くことで、負担が大きくなっていることがあります。また、周囲から信頼され、仕事を任されることが多い社員ほど、自分から「忙しい」「難しい」と言い出せない場合も考えられます。
管理職には、日頃から部下の様子をよく見て、普段との違いや疲労の兆候に気づき、必要に応じて声をかけることが求められます。
そのうえで、話を聞くだけで終わらせず、業務量の調整や休息の確保、必要に応じた人事・労務部門や産業保健スタッフとの連携など、具体的な対応につなげることが重要です。
■ 労務管理を「知っている」から「判断・実践できる」へ
過重労働の防止には、労働基準法や36協定、安全配慮義務などの基本的な知識が必要です。しかし、制度を理解していても、実際の職場で適切に判断できるとは限りません。
ベアラボの労務管理研修では、労働時間・休日・36協定の考え方に加え、派遣社員を含む労務管理や、労働災害が発生した際の対応など、現場で必要となる知識を扱っています。
また、退勤打刻後に作業を続けていた従業員が負傷したケースなど、職場で起こり得る事例を用い、何を確認し、どのように対応すべきかを考える機会を設けています。
こうした事例を通じて、記録上の情報だけで判断せず、実際の勤務状況を正確に把握することや、必要に応じて組織として対応することの重要性を学びます。
法令や制度の知識を、日常の労務管理における適切な判断と行動につなげることを重視しています。
■ タイムマネジメントは「時間」ではなく「仕事の進め方」を見直すこと
タイムマネジメントというと、時間を細かく管理することや、個人の作業スピードを上げることをイメージするかもしれません。しかし、時間そのものを増やすことはできません。大切なのは、スケジュールの立て方や業務の優先順位、仕事の進め方を見直すことです。
ベアラボのリーダーシップ・タイムマネジメント研修では、スケジュール管理や仕事の優先順位づけ、適切な権限委譲などについて学びます。
また、実際に自分が抱えている業務を洗い出し、重要度や緊急度を踏まえて優先順位を整理するワークも取り入れています。日頃の仕事を振り返ることで、何を優先すべきか、どの業務を他のメンバーに任せられるかなど、自分自身の仕事の進め方を見直す機会としています。
さらに、仕事を任せる際には、目的や内容を明確に伝え、進捗を確認しながらフォローすることも重要です。個人の効率化にとどまらず、チーム全体の業務をどう進めるかという視点を持つことが、特定の社員への負担集中や業務の属人化を防ぐことにもつながります。
■ 過重労働を個人の頑張りで解決しない職場へ
過重労働の防止は、社員一人ひとりの時間管理や努力だけで実現できるものではありません。
企業として適切な労務管理体制を整えることはもちろん、管理職が日頃から業務の状況を把握し、必要に応じて仕事の進め方や役割分担を見直すことが重要です。
また、管理職自身が多くの業務を抱え、部下の育成や業務調整に十分な時間を確保できていない場合もあります。管理職個人の努力に任せず、組織として判断基準や役割を整理することも必要です。
長時間労働の削減を単に「残業を減らす」という目標で終わらせず、仕事の量や進め方、働く人への負担まで見直していくことが、無理なく成果を出せる職場づくりにつながります。
ベアラボでは今後も、労務管理やタイムマネジメント、マネジメントに関する研修を通じて、企業ごとの課題に応じた人材育成・組織づくりを支援してまいります。
【出典】厚生労働省「令和8年版 過労死等防止対策白書」「過労死等の防止のための対策に関する大綱」